テスラのModel 3に採用された永久磁石モーターとは?誘導電動機との違いなど

発売開始直後から米国で爆発的人気となっているテスラのModel 3。そのパワートレインとして採用されたリアモーターの種類が Permanent Magnetic Motor、日本語では永久磁石モーターと呼ばれるものです。今回はその特性や、テスラがModel 3に採用した経緯などをまとめてみます。

モーターの歴史と基本的な構造

モーターは電流と磁界から発生する力を利用して駆動するもので、中学校で簡単な理科の実験をやった記憶がある方も多いかと思います。フレミングの左手の法則から、磁界の向きと電流の向きによって力の作用する方向が決定します。モーターはこの力を用いて回転します。また、電気の流れ方は直流と交流の2通りがあり、それぞれの流れ方に対応するモーターが直流モーター、交流モーターになります。直流モーターは Direct-Current Motor の頭文字をとってDC、交流モーターは Alternating-Current Motor でACと呼ばれいます。

テスラ社の名前の由来となったニコラ・テスラは交流に関して多くの発明を残しており、1880年代後半から実用化が始まった交流モーターもその一つです。そして交流モーターの代表的なものが誘導電動機と呼ばれる Induction Motor(インダクションモーター)で、テスラでは初期のロードスター、そして Model S / X に採用されています。尚、Model 3でもAWD(Performanceモデル、Long Rangeモデル)の場合、フロントモーターには引き続きインダクションモーターが使われています。

そもそもなぜテスラは一番はじめのロードスターを作った時に誘導電動機を採用したのかという理由ですが、ゼネラルモーターズによって初めて量産されたEVであるGM EV1やtzeroといったEVを手がけた、いわばモダンEVの立役者であるAlan Cocconiという人物の会社AC Propulsionから初期の頃にテスラはモーターデザイン(設計)のライセンスを受けていたようです。結局大部分を独自に設計し直したようですが、そういったルーツがあり、初期のロードスターでは交流インダクションモーター(ACIM)が採用された、というのが現在一番信ぴょう性の高い話のようです。それに、交流モーターを開発したのがあのニコラ・テスラだったというのもあったのかもしれません。

永久磁石モーターの特性と誘導電動機との比較

そもそも永久磁石とは、磁場や電流がなくても自然のまま磁力を持ち続ける磁石のことで、その物体を形成する原子の磁気モーメントが一方向に揃ったまま安定していることからその性質を有します。「永久」という名前がついていますが、ほぼ永久的にその性質が損なわれることはないということで、例外として非常に高音(キュリー点)に熱せられたりすると磁気モーメントの方向性が崩れて性質が変化してしまいます。

ちなみに1917年に世界初の人工の永久磁石、KS鋼を作ったのは日本人の物理学者である本多光太郎さんです!そう思うと日本人として永久磁石に親近感が湧きますね。

Model 3のリアモーターに採用されている永久磁石モーターは高効率で、小型化・軽量化が可能という特徴を持ちます。このためModel 3だけではなく、GMのシボレーボルトなど他のEVや日本メーカーのHEVなどにも使用されています。永久磁石は鉄、コバルト、ニッケルなどの原料でできており、レアアースが含まれていることから少し前まではコスト面が難点であったものの、テスラに関しては中国で安定的なサプライヤーが見つかったようです。

テスラが実際に使っている永久磁石モーターの機構に関しては、米国EPA(Environmental Protection Agency)の資料などからAC(交流)3相永久磁石同期電動機(PMSM)、正確には Permanent Magnetic Switched Reluctant Motor というテスラ独自の設計だという説が濃厚です。

また、テスラはなぜModel 3のリアに誘導電動機ではなく永久磁石モーターを採用したのかという憶測については、オンラインフォーラムのRedditで色々と議論がされていました

Redditより

有益で確かそうな情報をかいつまむと、要は永久磁石モーターは(上にも述べたように)基本的に高効率で小型化できるというのが一番の特徴。ただし、トレードオフもあり、それは高回転時(トルクが大の時)やモーターサイズを大きくした場合などは効率は落ちてしまうらしく、高回転時には誘導電動機の方が効率はよくなることが多いようです。(もちろんこれらは一般論で、テスラが独自に設計したモーターは様々な改良がなされているのかもしれませんが。)

実はテスラでモーターの設計を担当しているKonstantinos Laskarisという人物(テスラのプリンシパルモーターデザイナー)が、シカゴで行われたCWIEMEというEVのイベントでModel 3に永久磁石モーターを採用した背景について、少しだけ答えている場面があり、その回答の本文の一部が以下になります。

It’s well known that permanent magnet machines have the benefit of pre-excitation from the magnets, and therefore you have some efficiency benefit for that. Induction machines have perfect flux regulation and therefore you can optimize your efficiency. Both make sense for variable-speed drive single-gear transmission as the drive units of the cars.
So, as you know, our Model 3 has a permanent magnet machine now. This is because for the specification of the performance and efficiency, the permanent magnet machine better solved our cost minimization function, and it was optimal for the range and performance target.
Quantitatively, the difference is what drives the future of the machine, and it’s a tradeoff between motor cost, range and battery cost that is determining which technology will be used in the future.

(全文はChargedの記事内で確認できます。)

ここから読み取れることは、テスラはパフォーマンスと効率、そしてコストのバランスを考えて永久磁石モーターを採用したということ。永久磁石モーターはModel 3に求められる価格(コスト)と走行距離およびパフォーマンスを考えた時に最適解だったのでしょう。そしてModel 3のAWDタイプではフロントに引き続きインダクションモーターを使用しているというのも補完という意味で納得がいきます。AWDタイプに求められる加速(トルク)には永久磁石モーターだけではやはりパワー不足のようです。

テスラはこの最適なモーターのタイプをはじき出す為に独自の高度なコンピューターシミュレーションを用いていると言われています。ターゲットとする価格やレンジ(走行距離)、パフォーマンスなどの諸条件を設定し、シミュレーションを回すことによって設定した条件下での各モーターの性能を分析、評価することができるようなソフトウェアと推測されます。実際、Laskaris氏はテスラに入る前に、コンピューターを用いてモーターのパフォーマンスを予測するアルゴリズムに関してPhDを取得しているそうです。

今後リリースされるモデルはどうか

Model 3はパフォーマンスとコストのバランスから永久磁石モーターが採用されたという背景が伺えますが、今後リリースされる予定の新型ロードスター、Semi(トラック)、Model Y などはどうなるのでしょうか。新型ロードスターは高回転でのドライブの割合が高くなると予想されるので、Model S / X と同じく誘導電動機が採用されるかもしれません。今後永久磁石バッテリーの性能が上がり、大きいトルクも出せるように改良されれば、また別の話になりそうですが。いずれにせよ、Semi や Model Y 含め、全てテスラが行うコンピューターによるシミュレーションで高度に予測され、最適なモーターのデザインが選定されることになるはずです。

shuhei koyama

2015年6月に Tesla Model S を購入。85,000kmほど走りました。ブログはかなり不定期です... Attendar(アテンダー)というモダンな日程調整ツールを開発しています。ぜひ使ってみてください!https://attendar.com/ja